実名報道への支持:強制性交・器物損壊
背景
実名報道がなされるか否かによって,被告人に対する態度や判断(量刑判断など)が異なるのかを検討するために作成されたシナリオです。また、30罪名を検討した研究で最も実名報道が支持されていた強制性交と,最も実名報道が支持されていなかった器物損壊を条件としています。
シナリオ内容1
赤字は罪名間で内容が異なる箇所、青字は報道間で内容が異なる箇所です(実際の調査では赤字にはされていません)
報道の日付については,調査直前になるよう設定しました。ですので,今後調査に使う際には変更する必要があります。また,逮捕から起訴までには最長20日の勾留が認められているため(刑事訴訟法208条1項・2号),この期間を最大まで使ったという想定でシナリオを作成しています。
条件 | 内容 |
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実名報道・強制性交条件 | |
東京都内で今年10月、女性が性的暴行を受けた事件で、東京地方検察庁は、今月11日、18歳の松村英哉被告を強制性交の罪で起訴しました。 松村被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たり、東京地検により氏名を公表されました。 起訴状などによると、松村被告は、10月20日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性を持っていたひもで縛った上で性的暴行に及んだとして強制性交の罪に問われています。 松村被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 | |
実名報道・器物損壊条件 | |
東京都内で今年10月、女性の私物が傷つけられた事件で、東京地方検察庁は、今月11日、18歳の松村英哉被告を器物損壊の罪で起訴しました。 松村被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たり、東京地検により氏名を公表されました。 起訴状などによると、松村被告は、10月20日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性が持っていたカバンに突然ペンキをかけ、使えなくしたとして器物損壊の罪に問われています。 松村被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 | |
匿名報道・強制性交条件 | |
東京都内で今年10月、女性が性的暴行を受けた事件で、東京地方検察庁は、今月11日、18歳の男性を性的暴行の罪で起訴しました。 被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たりますが、東京地検は氏名を公表しませんでした。 起訴状などによると、被告は、10月20日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性を持っていたひもで縛った上で性的暴行に及んだとして強制性交の罪に問われています。 被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 | |
匿名報道・器物損壊条件 | |
東京都内で今年10月、女性の私物が傷つけられた事件で、東京地方検察庁は、今月11日、18歳の男性を器物損壊の罪で起訴しました。 被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たりますが、東京地検は氏名を公表しませんでした。 起訴状などによると、被告は、10月20日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性が持っていたカバンに突然ペンキをかけ、使えなくしたとして器物損壊の罪に問われています。 被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 |
シナリオ内容2
その後の研究では,強制性交と器物損壊を行った被告の実名報道をすべきと考えるかを検討するために,上のシナリオ内容1の報道条件の記述を提示しないシナリオを作成しています。
太字が上のシナリオ内容1からの変更点,赤字が罪名間で内容が異なる箇所です。
条件 | 内容 |
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強制性交条件 | |
東京都内で今年10月、女性が性的暴行を受けた事件で、東京地方検察庁は、今月21日、18歳の男性を性的暴行の罪で起訴しました。 起訴状などによると、被告は、10月30日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性を持っていたひもで縛った上で性的暴行に及んだとして強制性交の罪に問われています。 被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たるため、法的にはその実名を報道することが可能です。 | |
器物損壊条件 | |
東京都内で今年10月、女性の私物が傷つけられた事件で、東京地方検察庁は、今月21日、18歳の男性を器物損壊の罪で起訴しました。 起訴状などによると、被告は、10月30日、東京都内の路上で、歩いていた面識のない20代女性が持っていたカバンに突然ペンキをかけ、使えなくしたとして器物損壊の罪に問われています。 被告は「私がやったことに間違いありません」と述べており、今回が初犯ということです。 被告は当時18歳で、起訴後の実名報道が可能な「特定少年」に当たるため、法的にはその実名を報道することが可能です。 |
参考
実際の調査ページでは以下の形式で提示しました。以下は実名報道・強制性交条件のものですが,他の条件も同様です。

出典
- 向井智哉・貞村真宏・湯山 祥・松木祐馬・綿村英一郎 (in press). 特定少年の量刑に対する実名報道の効果 感情心理学研究, 30(3).