ムスリムに対する脅威認知

背景

ムスリム(特に外国人ムスリム)が日本に対して脅威となっているとどの程度認知しているかを測定します。項目内容に大きな変遷があります。最初の論文(近藤・向井, 2017)では、岡井・石川(2011)の「地域変化イメージ」を用いて測定しています(バージョン1)。その後の研究(向井他, 2020)では、統合脅威管理理論(Integrated Threat Theory:ITT)の理論枠組みの中で作成された尺度を翻訳して用いています(バージョン2)。その結果、ITTの想定とは異なる因子の分かれ方をしたため、さらにその後の研究(向井他, 2020)では、別の質問項目を翻訳し再度検討しています。この最後の尺度については、外国人や中国人等、ムスリム以外の対象についても尋ねることを想定して作成しています。この質問項目については外国人に対する脅威認知をご覧ください。

バージョン1

教示文

イスラム教徒が地域に増えることによって以下のようなことが起こると思いますか。1から5の数字のうち、あなたの考えに最も当てはまる数字に丸をつけてください

選択肢
  • そう思わない
  • あまりそう思わない
  • どちらとも言えない
  • 少しそう思う
  • そう思う
項目内容(4項目)
生活環境が悪くなる
ゴミ捨てなど生活ルールが乱れる
治安が悪くなる
日本人の仕事が減る

バージョン2

教示文

あなたは以下のような意見にどの程度賛成しますか。最も当てはまる選択肢を選んでください。

選択肢
  • 非常に反対
  • 反対
  • どちらとも言えない
  • 賛成
  • 非常に賛成
項目内容(13項目)
因子名項目
全般的脅威認知
(6項目)
イスラム教徒は、日本人の税金負担を増加させている
イスラム教徒の移民は日本文化に悪影響を及ぼしている
イスラム教徒は、日本人から仕事を奪っている
人付き合いに関するイスラム教徒の価値観と信念は、日本人のものと合わない
イスラム教徒のせいで、日本人が受けられる社会福祉が縮小している
イスラム教徒が日本から得ている利益は、その働きに見合ったものではない
権利付与
(4項目)
イスラム教徒は、日本人と同等の医療福祉を受ける資格がある
イスラム教徒の子供は日本人と同じように公立学校に通う権利がある
イスラム教徒は、日本人と同じように生活保護を受ける資格がある
イスラム教徒が増加したとしても、日本人が受けられる社会福祉の質は変わらない
類似性認知
(3項目)
道徳と宗教に関するイスラム教徒の価値観や信念は、日本人のものとよく似ている
家族や子どもの教育に関するイスラム教徒の価値観と信念は、日本人のものとよく似ている
仕事に関するイスラム教徒の価値観や信念は、日本人のものと基本的によく似ている
出典
  • 近藤文哉・向井智哉 (2017). 計量的手法を用いたムスリムに対する受容的態度の規定要因の検討――「非ムスリム研究」の展開に向けて―― 中東学会年報, 33, 95-117, doi: 10.24498/ajames.33.1_95.
  • 向井智哉・金信遇・木村真利子・近藤文哉・松木祐馬 (2020). ムスリムに対する受容的態度の日韓における規定要因――統合脅威理論の立場から―― 宗教と社会, 26, 1-16.
  • 向井智哉・松木祐馬・金信遇・木村真利子 (2020). ムスリムに対する脅威認知への統合脅威理論の適用可能性――日韓における中国人,日本人・韓国人,外国人に対する脅威との比較を通じて―― 実践政策学, 6(2). 159-165.
  • 岡井宏文・石川基樹 (2011). 地域住民におけるムスリム・イスラームに対する意識・態度の規定要因――岐阜市調査の事例より―― イスラーム地域研究ジャーナル, 3, 36–46.
尺度を使用している論文
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