刑事司法に対する態度尺度
背景
刑事司法に対する態度を,どのような処遇(刑罰か治療か)が適当かという観点から測定する尺度です。一部の項目は板山(2014)から借用されています。各因子を3項目に縮減した短縮版も存在します。全項目版には項目内容が非常に似ているものがあるので,短縮版の方が使い勝手がいいかもしれません。
因子構造
因子名 | 構成概念 |
---|---|
刑罰の厳罰化 | 犯罪者に対する刑罰を,より厳しくすることを支持する態度 |
刑罰の早期拡大化 | より早い段階で,より多くの行為を刑罰という手段によって取り締まることを支持する態度 |
治療の推進化 | 犯罪者に対する教育や治療を, より推進することを支持する態度 |
治療の早期拡大化 | より早い段階で,より多くの行為に対して,教育や治療を行うことを支持する態度 |
教示文
以下では、犯罪や犯罪者をどう扱うべきかについて、あなたが持つ意見をお聞きします。あなたの意見にもっとも当てはまる回答を選んでください。
選択肢
- まったくそう思わない
- あまりそう思わない
- どちらかと言えばそう思わない
- どちらかと言えばそう思う
- かなりそう思う
- 非常にそう思う
項目内容(22項目)
因子名 | 項目 |
---|---|
刑罰の厳罰化 (5項目) |
|
犯罪者に対する判決をもっと厳しくするべきだ | |
私が裁判官なら、今以上に厳しい罰を犯罪者に与えたい | |
なぜ犯罪者への刑罰があんなに軽いのかと疑問に思う | |
犯罪をした人に与えられる刑期は短すぎる | |
犯罪者への罰は厳しくすればするほどよい | |
刑罰の早期拡大化 (6項目) |
|
人に不安を与える行為をした時点で、刑罰を科せるようにするべきだ | |
人に不安を与える行為を行った段階で、法律で処罰できるようにするべきだ | |
単に他人に迷惑をかけるだけの行為であっても、法律で処罰できるようにするべきだ | |
単に常識やモラルを傷つけるだけの行為であっても、逮捕できるようにするべきだ | |
人に迷惑をかける行為を行った時点で、逮捕できるようにするべきだ | |
実際に犯罪が起きる前に、刑罰を科せるようにするべきだ | |
治療の推進化 (5項目) |
|
なぜ犯罪者の社会復帰を重視しないのかと疑問に思う | |
犯罪者に対して社会復帰や更生のための援助を、もっと行なうべきだ | |
犯罪をした人に対して行われる、社会復帰のための援助は少なすぎる | |
私が裁判官なら、今以上に犯罪者の社会復帰を重視した判決を下したい | |
犯罪者の社会復帰や更生のための援助は、充実させればさせるほどよい | |
治療の早期拡大化 (6項目) |
|
単に他人に迷惑をかけるだけの行為をする人にも、生活を改めさせるための援助を行なうべきだ | |
人に不安を与える行為を行なった段階で、生活を改めさせるための援助を行なうべきだ | |
人に不安を与える行為をした時点で、予防のための援助を行なうべきだ | |
人に迷惑をかける行為を行った時点で、そのような行為をしないよう教育を行なうべきだ | |
単に常識やモラルを傷つけるだけの行為をする人にも、そのような行為をしないよう教育を行なうべきだ | |
実際に犯罪が起きる前に、予防のための援助を行なうべきだ |
出典
尺度を使用している論文
- Takahashi, M. (2023). Impact of base rate information on estimated risk of recidivism of sex offenders in Japan. Psychology, Crime & Law.
- 向井智哉・松木祐馬 (2022). 厳罰傾向と社会的支配志向性の関連――日韓のサンプルを用いた探索的検討―― パーソナリティ研究, 31(2), 125-135. doi: 10.2132/personality.31.2.7
- 向井智哉・藤野京子 (2021). 刑法イメージの構造と刑事司法に対する態度との関連 応用心理学研究, 47(2), 83-93. doi: 10.24651/oushinken.472_83
- 向井智哉 (2021). 犯罪者・被害者イメージの構造および刑事司法に対する態度との関係性 実践政策学, 7(2), 171-179.
- 松木祐馬・向井智哉・湯山 祥・貞村真宏 (2021). 厳罰傾向と自由意志信念の関連における非難の媒介効果 パーソナリティ研究, 30(1), 45-47. doi: 10.2132/personality.30.1.8
- Mukai, T., Fukushima, Y., Iriyama, S., & Aizawa, I. (2021). Modelling determinants of individual punitiveness in a late modern perspective: Data from Japan. Asian Journal of Criminology, 16, 337-355. doi: 10.1007/s11417-020-09338-9
- 向井智哉・藤野京子 (2020). 厳罰傾向とアイデンティティの不安定性の関連に対する排他性の媒介効果 法と心理, 20, 141-149. doi: 10.20792/jjlawpsychology.20.1_141
- 向井智哉・松木祐馬 (2020). 厳罰傾向と犯罪者および被害者に対する感情的反応との関連――犯罪不安,怒り,共感に着目して―― 感情心理学研究, 27(3), 95-103. doi: 10.4092/jsre.27.3_95
- 向井智哉・藤野京子 (2020). 刑事司法に関連する行為者への信頼と刑事司法に対する態度の関連 応用心理学研究, 45(3), 219–229. doi: 10.24651/oushinken.45.3_219
- 向井智哉・福島由衣・入山 茂・相澤育郎 (2019). 厳罰傾向を規定する要因のモデル化の試み――経済的不安, 犯罪不安, 排外主義的態度に着目して―― 龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報, 9, 69-83.
- 向井智哉 (2019). 厳罰傾向および防犯行動の規定要因――犯罪不安, 被害リスク知覚, 自己決定欲求, コミュニティによる自己決定を中心に―― 法と心理, 19, 54-63. doi: 10.20792/jjlawpsychology.19.1_54