精神障害(アスペルガー傷害)を有する被告人

背景

精神障害(アスペルガー傷害)の有無が被告人に対する量刑判断にどのような影響を及ぼすかを検討するために作成したシナリオです。「罪種の重大性」(高=傷害致死・低=詐欺)と「アスペルガー障害の有無」の2条件で操作されています。傷害致死条件については先行研究(白岩・唐沢, 2015)を大きく参考にし、詐欺条件はそれに対応して作成しました。

シナリオ内容
条件記述
罪種の
重大性
傷害致死被告人Aは,東京都内の路上で,会社の同僚であった被害者Bと口論の末,所持していた刃渡り10センチの果物ナイフで相手の腹部を刺し,逃走した。被害者は近くの病院に運ばれたが,1時間後に死亡した。罪名・罪状は傷害致死,刑法205条。被告人に前科はなく,罪状を認めている。(1)
詐欺被告人Xは,本当は自分の遊興費に使うつもりであるのに,被害者Yに対し,「確実に値上がりする株を知っている。自分に金を預けてくれたら,それを株に投資して,必ずもうけさせてやる」と嘘をついた。これを信じたYは,現金50万円をXに渡し,Xはそれを受け取った。罪名・罪状は詐欺,刑法246条。被告人に前科はなく,罪状を認めている。(1)
アスペルガー
障害の有無
有条件起訴後に精神鑑定を担当した医師は,被告人にはアスペルガー障害があり,被告人の行動はその疾患によって影響された可能性があると述べた。
無条件起訴後に精神鑑定を担当した医師は,被告人には何の精神障害もなく,被告人の行動はその人の意思によって行われたものである可能性が高いと述べた。

(1)の後に「アスペルガー障害の有無」の記述を追加します。

出典
  • 向井智哉・松木祐馬・貞村真宏・湯山 祥 (2022). アスペルガー障害を有する被告人に対する量刑判断――媒介メカニズムの検討―― 法と心理, 22.
  • 白岩祐子・唐沢かおり (2015). 量刑判断に対する増進・抑制効果の検討――被害者への同情と裁判に対する規範的なイメージに着目して―― 感情心理学研究, 22(3), 110–117. doi: 10.4092/jsre.22.110
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